差し歯やインプラントがあっても矯正治療はできるの？

矯正治療でコンプレックスだった歯並びを治したいけど、差し歯もあってインプラントも入っている、という方もいらっしゃるのではないかと思います。今回は、差し歯やインプラントが入っている場合、あるいは矯正後にインプラントを入れることができるのかなどについてお話をいたします。

差し歯とインプラントの違い

差し歯やインプラントが入っていても矯正治療ができるのか、という疑問の前に、差し歯とインプラントの違いについて再度理解をしておきましょう。同じ補綴物でもその根底にあるものは全く異なります。どういうことかというと、自分の歯の根っこが残っているか残っていないかの違いです。

差し歯は、自分の歯と根っこが残っている状態に被せる被せ物です。虫歯が進行し、神経まで炎症が及んでいる歯はまず歯髄を取り除き、根の中をきれいにする根管治療が行われます。根管治療後は土台を立て、型取りを行ってセラミッククラウンなどの差し歯を作製し、機能を取り戻します。歯を抜かないので、自分の歯の根っこが残っており、残存歯としてカウントします。

いっぽうインプラントは、虫歯や歯周病により歯を残すことができずに抜歯をしたあと、機能を回復させる治療です。手術によって顎の骨にインプラント本体を埋め込み、人工の根っことして噛む機能を回復させます。インプラントを入れたあとは顎の骨としっかり接合させるために半年くらい期間を置き、顎の骨とインプラント体の接合を確認後、型取りをして人工歯を被せます。差し歯と違い歯を抜いて人工の根っこ（インプラント）を入れるので、残存歯としてカウントしません。

自分の歯を使った差し歯とインプラントを使った差し歯では、パッと見た感じはどちらも同じように見えます。違いは自分の歯の根っこがあるかないか、というところをまず理解しておきましょう。

差し歯とインプラント、どちらも矯正治療は可能？

では差し歯やインプラントが入っていても、矯正治療は可能なのでしょうか。差し歯は前述したとおり、自分の歯の根っこを残した治療法です。そのため差し歯があっても矯正装置を付けて歯を動かすことができます。矯正装置によって歯が動くのは、歯の根っこにある「歯根膜」という組織があるからです。歯根膜の働きと矯正装置による力のかけ具合により少しずつ歯を動かすことができるため、歯の根っこが残っている差し歯でも矯正治療は可能なのです。

ではインプラントはどうでしょうか。インプラントは人工歯根です。したがって天然歯にある歯根膜は存在しません。歯槽骨と直接接合をさせていますが、歯根膜が存在しないため、矯正装置を付けても歯を動かすことはできないのです。

ただ、インプラントの本数や動かしたい部位によってインプラントが入っていても矯正治療が可能な場合があります。例えば奥歯にはインプラントが入っているが、歯並びを治したいのは前歯のみ、というケースでは部分矯正などで矯正治療が可能です。つまりインプラント自体は動かせないが、インプラントの歯を動かす必要がないと診断された場合、矯正治療ができることもあるということなのです。

またインプラントは動かせないというデメリットを逆手に取り、インプラントを固定源として歯を動かすという方法もあるようです。

ただインプラントが入っている場合、しっかりとした診断や治療計画が必要になります。インプラントが入っているけど矯正治療を希望する方は、矯正治療とインプラントどちらにも精通している医院での相談が望ましいでしょう。

また矯正治療後にそれまでの噛み合わせと変わってしまうことがあります。噛み合わせはとても重要なので、矯正治療後は上部構造（インプラントの上に装着する差し歯）の再治療をし、再度噛み合わせを正しく整えるのが良いとされています。

差し歯やインプラントがある場合の注意点とは？

差し歯の場合は大きな問題はありません。しかし差し歯や土台が二次カリエスによって治療が必要になった場合、先にこちらの治療を行います。また前歯が差し歯の場合、仮歯に置き換えて矯正治療終了後に再度型取りを行い、新しい差し歯にすることがあります。差し歯があるということは、虫歯菌が存在するということです。矯正中は虫歯になりやすいため、お口の中の衛生管理をきちんと行っておきましょう。

インプラントが入っている方、またこれからインプラントを入れる可能性がある方の矯正治療は、歯を動かす部分にインプラントが入っていなければそれほど問題にはなりません。インプラントを入れる可能性がある場合でも、先に矯正治療を行っておくと後からインプラントを埋入する位置が定めやすくなります。

インプラントと矯正治療の順番を間違えると、金銭面の負担が増えてしまいます。また治療後のお口の中の状態が予想していたものと異なってしまうことも否定できません。まずはかかりつけの医師に相談し、それぞれ連携を取っている医院を紹介していただくなど、綿密な治療計画が必要になります。

よりよいお口の状態へ改善するためにも納得のいく医院選びを行いましょう。

 

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