公開日:2022年9月7日
親知らずは全ての方に生えているわけではありませんが、親知らずがあることで、いくつかのトラブルを抱えることがあります。親知らずがあるからといって、絶対にトラブルが起きるとは限りませんが、抜かずにそのまま置いておくことで問題が生じてしまわないのでしょうか。
親知らずは第三大臼歯と呼ばれる、いちばん奥に生える永久歯で、20歳を過ぎてから生えてくる方がほとんどです。しかし必ずしも4本生えるわけではなく、1本しか生えてこないケース、親知らずの存在は認められるが歯ぐきに埋もれたままのケースなど様々です。親知らずの存在そのものが認められない方もたくさんおられます。
親知らずがあるかどうかはレントゲンで確認ができます。歯が痛くなり、歯医者でレントゲンを撮って初めて親知らずがあることに気付く方もいらっしゃると思います。また歯列矯正を始める前のレントゲン撮影で親知らずの元となる歯胚が認められ、将来的に親知らずが生えてくる可能性があることを指摘されることもあります。
このように、親知らずは必ずしも存在するわけではなく、ご自身でも気づきにくい歯なのです。
この親知らずですが、トラブルを起こしやすいというやっかいな歯でもあります。そのトラブルとは、「親知らずそのものにトラブルが起きる」というケースと、「親知らずがあることで他の歯にトラブルが起きる」というケースに分けられます。
具体的に見ていきましょう。
親知らずに起きるトラブルで最も多いのは、虫歯です。親知らずは一番奥に生えているため歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れが残りがちになり、虫歯菌の格好の活動場所になってしまいます。咬合面に穴が開く、隣接する第二大臼歯との間に虫歯ができるケースが多く見られます。
智歯周囲炎とは、親知らずの周りの歯ぐきが腫れる症状を言います。親知らずは智歯と呼ばれ、智歯の周りの歯ぐきが腫れることでこのような病名が付けられます。こちらも歯磨きがしにくいために汚れが残ることで歯ぐきの腫れや出血といった歯肉炎の症状が起きてしまいます。親知らずが中途半端に生えている半萌出のケースによく見られます。
親知らずが歯周病になるケースもよく見られます。特に30代以降でお口全体に歯周病の傾向がある方は、当然親知らずにも歯周病のリスクが高くなってしまいます。
親知らずが生えていると虫歯リスクが高まり、親知らずだけでなく、隣の第二大臼歯そのものに虫歯ができてしまうというケースが多くみられます。親知らずだけなら抜歯することで根本的な問題を解決することができますが、第二大臼歯は噛むために大切な歯です。その歯が虫歯になってしまうと、歯を削る治療が必要になってしまいます。また虫歯が神経まで到達してしまうと根の治療が必要になり、さらに歯をたくさん削らなければいけません。被せ物を被せることで噛む機能は回復させることはできますが、親知らずがあることで防ぐことができる虫歯を作ってしまうリスクが高まります。
親知らずがきれいに生えていることで矯正治療の必要性がない方もおられると思います。ただ親知らずがあると、上下の口元が前方へ突出する上下顎前突、いわゆる「ゴボ口」になり、横顔の美しさの指標であるEラインを乱してしまうことがあります。Eラインが綺麗であれば問題はないですが、口元がもっさりとして見える場合、親知らずが原因であることが考えられます。
親知らずを抜歯しないまま矯正治療を行うと、その後の後戻りを引き起こしてしまうことがあります。特に非抜歯矯正で矯正治療を行った場合、親知らずがあることで後戻りする可能性を否定できません。矯正治療のカウンセリングの際に、親知らずの有無の確認と親知らずを抜歯しないことで起こりうるリスク等を十分に相談することが大切です。
では親知らずは抜歯したほうが良いのでしょうか。それは、ケースバイケースということになります。例えば半萌出で何度も智歯周囲炎を繰り返す場合、対処療法では結局繰り返しになってしまいます。何度も繰り返すのを避けるためには抜歯することで根治できます。基本的に親知らずはなくても大きな問題にならない歯ですので、トラブルが起きる前の予防処置として、抜歯を勧められるかもしれません。
また虫歯リスクが高い口腔内においても、何度も虫歯治療を繰り返すよりは思い切って抜く方が良いと判断される先生もおられると思います。
歯周病においては、親知らずだけでなく他の歯も当然影響を受けてしまいます。磨きにくい親知らずは歯周病が進行するとグラグラして噛みづらくなってくるため、思い切って抜歯をする、という手もあるかもしれません。
歯並びについては、親知らずが上下4本ともきれいに生え揃っており、噛み合わせに問題がない場合、そのまま置いておくことも多いようです。親知らずを抜かずに矯正治療を行った後、リテーナーを付けておくことで後戻りの心配があまりない場合も抜かずに様子を見ることもあります。
なお親知らずを抜歯する場合、一般歯科で抜歯ができる場合と口腔外科で抜歯をしなければならない場合があります。親知らずについて心配事がある場合は、まずかかりつけの医院で相談してみましょう。
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