矯正で抜歯したくない人へ｜非抜歯でできるケース・治療法・注意点を解説

「歯並びを治すために抜歯は必要なのか」と気になっていませんか？

歯並びが気になり矯正治療を行いたいけれど、「歯を抜くことで見た目に変化が現れないか心配」「健康な歯を抜くのはもったいないし怖い」と、抜歯への不安がある方も多いのではないでしょうか？

矯正は、抜歯をしなくても治すことは可能です。

しかし、個人の状態によって抜歯をする必要性も考えられます。

そこで、今回は以下の内容について解説します。

• 矯正で抜歯は本当に必要？
• 抜歯が必要になるケース
• 抜歯が不要になるケース
• 抜歯せずに歯を並べる主な方法
• 抜歯・非抜歯それぞれのメリットとデメリット
• 無理な非抜歯矯正で起こりやすい失敗例
• 抜歯が必要かどうかの判断基準
• 抜歯せずに矯正したい人が知っておくべきポイント

この記事を読むことで、矯正や抜歯についての正しい知識を理解し、適切な対処や判断を実践できるようになります。

矯正のための抜歯に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

矯正で抜歯は本当に必要？

矯正治療は、患者の歯並びの状態によって、抜歯が必要な場合と不要な場合があります。

軽度なガタつきや、歯並びに十分なスペースがある場合は、抜歯をせず矯正治療をすることができます。

しかし、歯が大きかったり、本数が多かったりすることで、歯がきれいに並ぶスペースがない場合は、抜歯をして歯のスペースをとる治療が必要です。

矯正の治療で抜歯の必要があるのかどうかを知りたい場合は、医師に相談し、診てもらいましょう。

抜歯が必要になる主なケース

矯正の治療に抜歯が必要になるケースは、以下の6つです。

• 歯が並ぶスペースが足りない(叢生・乱杭歯)
• 口元の突出感を改善したい(上顎前突・下顎前突)
• 上下の噛み合わせのバランスが悪い(オーバーバイト・反対咬合)
• 歯の大きさや本数に個人差がある(過剰歯・先天欠損)
• Eライン(横顔)のバランスを整えたい審美的理由
• 奥歯の移動余地がない場合

それぞれ詳しく解説していきます。

歯が並ぶスペースが足りない(叢生・乱杭歯)

歯並びを治すためには、歯が重ならずにきれいに並ぶためのスペースが必要です。

しかし、顎の幅に対して歯が大きい、または本数が多く、歯がきれいに並ぶ余裕がない場合は、そのスペースを作るために抜歯が必要になります。

抜歯しか方法がないということはありませんが、スペースを作るために1番簡単で効率が良い方法が歯を抜くことです。

口元の突出感を改善したい(上顎前突・下顎前突)

口元が明らかに出っ張っている場合も、抜歯を伴う治療になることが多いです。

上顎突出や下顎突出など、口をうまく閉じることができない状態は、口呼吸の原因にもなってしまい、健康面でも歯並びの改善が推奨されます。

こうした前歯や顎の骨が前方に出ている場合は、抜歯をすることで歯を後ろに下げるスペースを作ることができます。

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上下の噛み合わせのバランスが悪い(オーバーバイト・反対咬合)

歯の位置関係や角度のズレが大きい場合、抜歯により歯列全体の調和を整えることがあります。

また、前歯だけ飛び出している、角度が大きくズレているなど、一部分だけ歯並びが悪いという症状の場合でも抜歯が検討されます。

全体的な歯並びが悪くない場合でも、極端に飛び出していたり角度がズレている歯を治すために必要なスペースがなければ、抜歯での調整が必要です。

歯の大きさや本数に個人差がある(過剰歯・先天欠損)

身長や顔の大きさに個人差があるように、歯や顎の大きさにも個人差があります。

そして、歯の本数も全ての人が同じではなく、少ない人も多い人もいます。

顎の大きさに対して、歯の本数が多い、または歯が大きすぎる場合には、対応できるスペースを作るために抜歯の検討が必要です。

逆に欠損がある場合は、歯を抜くことなく矯正の治療ができることもあります。

Eライン(横顔)のバランスを整えたい審美的理由

横顔や口元など、外見の改善が目的で矯正を検討する人は多いです。

歯の位置が原因で唇が前に出て見える場合、抜歯して前歯を後退させることで口元をスッキリ見せることができます。

奥歯の移動余地がない場合

歯並びの改善には歯がきれいに並ぶことができるスペースが必要です。

歯の本数が少ない場合や、歯と歯の間のスペースが広い場合は、非抜歯で矯正の治療を行える場合もあります。

ですが、そうでない限りはどうやってスペースを作るかが重要になってきます。

親知らずや顎の形によって、歯を奥方向へ移動(遠心移動)することが難しい場合には、抜歯でスペースを確保することが必要です。

抜歯が不要になるケース

矯正の治療に抜歯が不要になるケースは、以下の7つです。

• 歯の重なりが軽度で、少しのスペース確保で整う場合
• 歯と歯の間にすき間がある(すきっ歯)
• 顎の骨格に十分な幅・奥行きがある場合
• 奥歯を後方へ動かせるスペースがある場合
• 歯のサイズが平均より小さい・先天欠損がある場合
• 口元の突出が少なく、横顔のバランスが取れている場合
• 小児矯正で早期に顎の成長誘導ができた場合

それぞれ詳しく解説していきます。

歯の重なりが軽度で、少しのスペース確保で整う場合

歯と歯が少し重なっているだけなど、軽度のガタつき(叢生)であれば、歯を少し削ることでスペースを作り出すことが可能です。

削ることで確保できた少しのスペースによって、きれいな歯並びを作ることができ、抜歯をすることなく矯正治療をすることができます。

また、顎を少し広げたり、歯を奥に動かしたりなど、歯を削る以外にも歯列拡大で改善ができる場合もあります。

歯と歯の間にすき間がある(すきっ歯)

すきっ歯は、非抜歯で治すことができる代表的な症例です。

すきっ歯は、空いている隙間を利用して歯をきれいに並べることができるため、基本的に抜歯の必要はありません。

顎の骨格に十分な幅・奥行きがある場合

歯を奥に動かすスペースがあるという場合も、抜歯をせずに矯正をすることが可能です。

奥に動かすことで新しくスペースが生まれ、歯並びを整えることができます。

特に顎が広い人に多い症例です。

奥歯を後方へ動かせるスペースがある場合

親知らずが小さい、または生えてこないなどの理由から、顎の奥のスペースに余裕がある場合もあります。

この場合も、同じように歯を奥に移動させることで、歯を並べるためのスペースを作ることができるため、抜歯は不要です。

歯のサイズが平均より小さい・先天欠損がある場合

歯1本あたりのサイズが小さい、または本数が少ない場合は、自然にスペースが確保されていることが多いため、抜歯の必要はありません。

ただ、顎が同じように小さいと、歯がきれいに並ぶスペースがないケースもあります。

口元の突出が少なく、横顔のバランスが取れている場合

歯並びが多少悪くても、横顔のバランスが取れているという場合は、そのEライン(横顔の美しさ)を維持したまま非抜歯で矯正治療をすることができます。

反対に口元の突出があり、口を閉じることが難しいという場合は、抜歯が必要になるケースが多いです。

小児矯正で早期に顎の成長誘導ができた場合

成長期に顎を広げる治療(拡大床など)を行っていれば、成人後も抜歯を避けられるケースが多くなります。

顎の小ささは、歯並びのガタつきの問題に直結します。

成長期に顎を広げる治療を行うことで、永久歯になった際に歯並びが整いやすくなり、矯正が必要な場合でも、そのためのスペースが確保しやすいです。

抜歯せずに歯を並べる主な方法

抜歯をせずに歯を並べる方法は、以下の4つです。

• ディスキング(IPR)で歯を削ってスペースを作る
• 歯列拡大(側方拡大)でアーチを広げる
• 奥歯の遠心移動(インプラント矯正)で前歯のスペースを確保
• マウスピース矯正(インビザライン)

それぞれ詳しく解説していきます。

ディスキング(IPR)で歯を削ってスペースを作る

ディスキング(IPR)とは歯と歯の間を削ってスペースを広げる方法です。

削る範囲は多くても1本0.5mmほどで、歯に深刻な影響を与えることはなく、痛みを感じることもほとんどありません。

1本だけではわずかなスペースしか確保できませんが、数本、または全ての歯をディスキングすることで、矯正治療に必要なスペースを確保できる場合があります。

歯列拡大(側方拡大)でアーチを広げる

歯列の横幅や顎の幅が狭く、歯がきれいに並ぶスペースがない場合でも、幅を広げることができれば、抜歯せずに歯並びを整えることが可能になります。

側方拡大装置と呼ばれる器具を使用することで、歯列や顎の狭い幅を広げることができます。

側方拡大装置は、上顎の歯並びのアーチを左右に広げることを目的として作られたもので、歯の間にスペースを作り出すことが可能です。

奥歯の遠心移動(インプラント矯正)で前歯のスペースを確保

インプラント矯正は、アンカースクリューと呼ばれる小さなネジを、歯茎の骨の部分に埋め込んで歯を動かし、スペースを確保する治療です。

歯の奥にどれくらいの余裕があるかで動かす量は決まりますが、抜歯をせずに矯正治療を行うスペースを確保できる可能性があります。

矯正治療が終われば、ネジは抜くことができ、その際に残る跡も自然に治癒していきます。

マウスピース矯正(インビザライン)は非抜歯矯正と相性が良い

インビザラインとは、透明なマウスピースを使用する、従来のワイヤー矯正とは全く異なる治療法です。

歯を後ろに動かすことに適しており、矯正治療において重要な歯並びのためのスペースを確保することが可能です。

マウスピース矯正は非抜歯矯正と相性が良いため、見た目を気にすることなく治療を進めることができます。

抜歯・非抜歯それぞれのメリットとデメリット

矯正治療において、抜歯をする場合にもしない場合にも、それぞれメリットとデメリットがあります。

• 抜歯矯正のメリットとデメリット
• 非抜歯矯正のメリットとデメリット

それぞれ詳しく解説していきます。

抜歯矯正のメリット

抜歯をすることで、必要なスペースを確実に確保することができるので、きれいな歯並びと快適な噛み合わせに仕上げることができます。

歯並びがきれいになると、自然な笑顔を保つことができるだけでなく、Eラインが整い横顔もきれいになります。

抜歯矯正のデメリット

永久歯は一度抜いてしまうと、二度と元には戻りません。

本来であれば抜く必要のない健康な歯を抜いてしまうことは、見た目や全体の歯のバランスに影響がでる可能性があります。

また、抜歯の際は麻酔によって痛みを感じづらくなりますが、それでも苦しさを感じることや、麻酔が切れた後に強い痛みが続くことがあり、精神的な負担になります。

非抜歯矯正のメリット

非抜歯矯正は、抜歯にかかる費用や時間、痛みのリスクなしで、負担の少ない治療が可能です。

また、抜歯をしないことで、自然な口元や横顔の印象を維持することもできます。

非抜歯矯正の技術は日々進化しており、歯の状態によってさまざまな方法での治療が可能です。

非抜歯矯正のデメリット

非抜歯矯正は、歯を抜くことなく歯並びを改善することができる一方で、口元の突出感が改善できない場合があります。

出っ歯を治せない危険性があるだけでなく、入りきらなかった前歯がより前に突き出て悪化してしまう可能性もあります。

また、狭いスペースに無理やり歯を並べることは歯肉にも負担になり、虫歯や歯周病のリスクが高まるため注意が必要です。

無理な非抜歯矯正で起こりやすい失敗例

非抜歯矯正を無理に進めてしまうと、次のような失敗につながる危険があります。

• 前歯が出てしまう
• 歯列の幅が不自然になる
• 治療後に後戻りが起きる
• 治療期間が長くなる

それぞれ詳しく解説していきます。

前歯が出てしまう

必要なスペースが確保できず、入りきらなかった前歯が前に突き出てしまう可能性があります。

前歯が出てしまうと、歯並びだけでなく、口元の突出感や横顔の印象も悪化させてしまうリスクを回避できません。

歯列の幅が不自然になる

非抜歯にこだわり、顎や歯の大きさを無視してしまうと、歯列の幅が不自然になるリスクがあります。

必要な抜歯を避けた治療は、歯を横側に広げて外側に傾斜ができてしまったり、歯列のアーチを広げ過ぎてしまったりする可能性があります。

矯正後も不自然な歯列の幅が残ってしまうリスクがあるため、無理なスペース確保は危険です。

治療後に後戻りが起きる

無理な非抜歯治療を進めた場合、矯正後に後戻りしてしまうリスクがあります。

歯並びや噛み合わせの悪さが重度な場合や、奥の歯によって歯が前に押されているような場合は、抜歯が必要なケースが多いです。

こうしたケースで、無理に非抜歯矯正を行うと、後戻りが起こりやすくなってしまいます。

治療期間が長くなるケースもある

矯正の治療期間は、歯の状態や患者の年齢によって異なります。

歯並びを整えるためにスペースが必要な場合、顎の骨をゆっくり広げる、または歯を動かす装置を使用するため、治療期間が長くなるケースもあります。

抜歯が必要かどうかの判断基準

矯正治療において、抜歯が必要かどうかの判断基準は、主に以下の2つです。

• 歯並び・嚙み合わせ・口元のバランスを総合的に見る
• CT・セファロ分析などの精密検査で判断

それぞれ詳しく解説していきます。

歯並び・噛み合わせ・口元のバランスを総合的に見る

矯正治療に抜歯が必要かどうかの判断は、その人の歯の状態によって異なります。

大きなポイントとしては、口内にきれいな歯並びを作るためのスペースがあるかどうかです。

歯並びや噛み合わせの状態、歯の位置、前歯・口元のバランスなどを見て、総合的に判断されます。

CT・セファロ分析などの精密検査で判断

矯正を専門で行う医師がいる病院では、必ずCTやセファロなどのレントゲンをもとに治療方針を決定します。

正面・側方・頭頂方向の3方向から頭部全体を撮影することができるセファロは、矯正治療の計画を立てるのに非常に重要なものです。

CTは3次元的な画像で、顎全体を撮影することができます。

骨格のバランス、歯の位置関係などをしっかりと診断することが、治療に抜歯が必要なのかどうかの判断材料になります。

医院によって方針が異なるため、セカンドオピニオンも検討する

抜歯が必要かどうかの大きな判断基準は、スペースの確保が可能かどうかです。

歯並びの状態や骨格に個人差があるように、治療方針についても医院や担当の医師によって異なる場合があります。

1つの判断を全てとして捉えるのではなく、複数の医院でカウンセリングを受け、セカンドオピニオンをもらうことも検討してみてください。

抜歯せずに矯正したい人が知っておくべきポイント

抜歯をせずに矯正したい人が知っておくべきポイントは、以下の3つです。

• 「非抜歯＝すべての人に向く」わけではない
• 信頼できる歯科医に希望を正直に伝える
• 治療の限界とリスクを理解して選択する

それぞれ詳しく解説していきます。

「非抜歯＝すべての人に向く」わけではない

矯正治療にはどうしても抜歯が必要になるケースもあります。

非抜歯で治療ができるかは、あくまでも個人の状態によって判断されるため、すべての人が抜歯をすることなく治療ができるということはありません。

そのことを理解した上で相談し、医師と一緒に考えることが大切です。

信頼できる歯科医に希望を正直に伝える

矯正の治療は長期にわたるため、安心して治療を受けることができる医院で、信頼できる医師の治療を受けることが、精神的な負担の緩和に繋がります。

希望や不安を遠慮せずに伝えられる環境で治療を進めて、納得のいく結果につなげましょう。

治療の限界とリスクを理解して選択する

抜歯・非抜歯のどちらを選んでも、それぞれにメリットとデメリットがあり、そのリスクをしっかりと理解して選択する必要があります。

非抜歯での矯正は治療に限界があるため、どこまで自分の希望が叶うのかを把握しておくことも重要です。

まとめ｜抜歯しない矯正を希望するなら、まずは専門医へ相談を

矯正治療での抜歯の必要性は、患者の歯並びや骨格の状態によって異なります。

そのため、矯正治療で抜歯をする必要があるかどうかは、自分で判断せず、医師に診てもらいましょう。

近年、矯正治療の需要は格段に上がっており、その技術も進歩しています。

非抜歯での矯正についても治療の幅が広がっており、健康な歯を抜きたくないという患者の希望に沿った治療ができるケースも多いです。

正しい知識のもと、後悔のない判断と選択をできるようになってください。

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