矯正治療中は虫歯に注意!
歯並びの悪さや噛み合わせの悪さは見た目だけではなく、お口の健康にも影響を与えてしまいます。きれいな歯並びは健康な歯や歯ぐきがあってこそ引き立つものです。また矯正治療で歯並びを整えることで、虫歯などのリスクを減らすことができますが、矯正治療中はどうしても虫歯リスクを抱えてしまいます。それはワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも同じです。今回は、矯正治療中の虫歯についてお話をいたします。
目次
矯正治療中に見つかる虫歯とは?
一般的に虫歯というと、歯が痛くなったり穴が開いていることで虫歯に気付くものです。ただ痛みを感じ始めるということは虫歯が進行しているということであり、神経まで達するまでに処置を済ませたいものです。このように、虫歯は痛みを感じることで気付くことがほとんどです。矯正治療を始める前に虫歯が見つかった場合、虫歯治療を済ませてから矯正治療へ取り掛かることになります。
しかし歯と歯が重なっている部分にできる虫歯は、歯が動いて初めて虫歯が発見されることがほとんどです。この歯間にできる虫歯は咬合面にできる虫歯と比べて痛みをあまり感じないことが多いため、矯正装置を付けて歯が動き始めてから虫歯が発見されることも少なくありません。
これは、歯並びの悪さが影響した代表的な例です。歯と歯が重なっている部分は歯磨きがし辛く、重なり方によってはフロスも通すことが困難なこともあります。当然汚れが残り、プラークが溜まって虫歯が作られてしまいます。定期的なクリーニングで取り除くことはできますが、根本的な原因である歯並びの悪さを改善させないことには解決策にはなりません。
もちろん矯正治療で歯並びをきれいに改善させても、正しい歯磨きができなければ虫歯は作られてしまいます。ですが環境を改善することでお口の中のお手入れをしやすいというメリットを得ることができることは、今後のお口の健康を維持しやすくなることに繋がるのです。
矯正治療中の虫歯について
歯並びや噛み合わせの悪さを改善させるためには、ワイヤー矯正やマウスピース矯正といった矯正装置を使って治療を行います。どちらも歯に装置を付けるため、何も付けていないときと比べると当然虫歯リスクは上がってしまいます。一般的には固定式のワイヤー矯正と比べて取り外し式のマウスピース矯正は虫歯リスクは低いと言われていますが、過ごし方によっては虫歯が作られやすくなってしまうためどちらも同じ、と考えていいと思います。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、マウスピース矯正よりも虫歯リスクが高い治療法です。ブラケットやワイヤーが歯に付いているため、歯磨きがし辛くなります。そのため磨き残しが起こり、そこへプラークが溜まって虫歯菌や歯周病菌といったお口の健康を害する細菌の活動の場ができあがってしまいます。
固定式装置であるワイヤー矯正は複雑な構造でできており、細かな装置周りに汚れが付着しやすいので、念入りな歯磨きが必要になります。ワイヤー矯正中に虫歯になりやすいのは歯と歯の間、ブラケット周囲、奥歯にはめる銀色のバンドと歯の間です。歯ブラシだけでなく、ワンタフトブラシやフロス、歯間ブラシといった補助道具が不可欠です。
磨き方が悪くないか、フロスはどのようにして通せばよいのかなど、矯正中の歯磨き指導をしっかりと受けるようにしましょう。
マウスピース矯正
インビザラインなどのマウスピース矯正は取り外し式の装置のため、歯磨きがしやすいというのが大きなメリットです。とはいっても安心はできません。歯磨きがきちんとできておらず、食生活などに問題がある場合、あっという間に虫歯ができてしまう可能性があるからです。
マウスピース矯正の場合、歯をマウスピースで長時間覆うため唾液の循環がストップします。唾液には細菌を洗い流す作用を持っていますが、マウスピースを嵌めると唾液が入り込みません。歯磨きが不十分なままマウスピースを長時間嵌めると、マウスピースで閉じ込められた環境で虫歯菌が活動して虫歯が作られてしまいます。
マウスピース矯正は自己管理がとても大切です。歯磨きがしやすい装置であるにもかかわらず虫歯ができてしまうと、マウスピースのメリットも半減してしまいます。
矯正治療中は専門家のクリーニングが必須
矯正治療中に虫歯が作られないようにするためには、丁寧な歯磨きと歯科医院での定期的なクリーニングがとても重要になります。自分ではしっかりと磨いているつもりでも、装置周りに汚れが残っていたり、歯と歯の間に食べかすが詰まっているということも非常によく見られます。
特にワイヤー矯正は奥歯にいくほど装置に汚れが付いています。これは自分で取り除くのはなかなか大変なため、専門家の技術できれいに取り除きましょう。自分では見えない部分の汚れもプロの技術できれいに取り除くことができます。医院によっては毎月クリーニングの指導を行っており、矯正中の虫歯管理を徹底されているところも数多くあります。
歯が動いて、隠れて見えなかった虫歯とは違い、矯正治療中に新たな虫歯をつくるのは極力避けたいものです。もちろん早期発見によって最小限の治療にとどめることはできますが、できる限り新たな虫歯を作らずにゴールを迎えたいものですね。
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コラム監修者
- はぴねす歯科・矯正歯科 石橋駅前クリニック 総院長 野澤 修一
- 福岡歯科大学を卒業後、福岡県・大阪府・兵庫県の歯科医院にて14年間勤務。その後、2014年9月に「はぴねす歯科石橋駅前クリニック(大阪府池田市)」、2018年6月に「緑地公園駅前クリニック(大阪府府中市)」、2020年7月に「川西能勢口駅前クリニック(兵庫県川西市)」、2022年11月に「尼崎駅前クリニック(兵庫県尼崎市)」を開院。現在は医療法人はぴねすの理事長として4医院を運営。