公開日:2022年7月25日
歯には神経が通っていますが、ひどい虫歯などやむを得ない事情で神経を取らなければいけないことがあります。そして神経を取った歯は脆くなり、歯が欠ける、折れてしまうといったリスクを抱えてしまいます。では神経を取った歯が脆くなるのはどうしてなのでしょうか。
まず歯の構造について簡単に説明いたします。歯の表面は固いエナメル質に覆われており、内部の組織を守っています。エナメル質の内側には象牙質という黄色味を帯びた、やや柔らかい組織があり、さらにその内部には神経や血管が通っている歯髄があります。
「歯が痛い」「しみる」といった症状がある場合、神経が何らかの刺激をキャッチし、痛みやしみるといった症状として伝えています。痛みやしみるのは神経が通っているからこそであり、神経を取った歯はこのような刺激を感じ取ることはできません。
歯の神経が入っている歯髄という組織は神経の他に血管も走っており、歯に酸素や栄養素を届けるための大切な役割を持っています。
ところが何らかの原因で神経を取らざるを得ない場合があります。その原因とは何でしょうか。
歯の神経を取らなければいけない最も大きな原因は、虫歯です。虫歯は虫歯菌が出す酸によって少しずつエナメル質が溶かされ、進行していきます。最初は歯の表面が溶けるだけだったのが、少しずつ穴が開いてきます。神経近くの象牙質まで進行すると痛みやしみる症状が出始めます。この段階ではまだ神経を取らなくても良い状態であるのがほとんどですが、ここで治療をしないと虫歯は歯髄まで進行します。虫歯が歯髄まで到達すると非常に激しい痛みに襲われ、夜も眠れないくらいの激痛になることもあります。
ここまで症状が悪化すると、神経を取り除かなければ改善しません。歯髄を取り除く処置を「抜髄」と言い、神経と血管を取り除くことで痛みは解消します。
露髄とは、歯をぶつけて折れてしまった、歯がすり減ってしまったなどで歯髄が露出してしまっている状態を言います。虫歯でないのに歯髄が露出してしまうことで細菌が入り込み、炎症を引き起こすことがあります。露髄によって細菌感染が認められる場合、歯の神経を取り除く処置が必要になります。
虫歯でないのに歯がしみる場合、知覚過敏が疑われます。軽度の知覚過敏ならしみ止めを塗って様子を見ますが、ひどい知覚過敏の場合は神経を取ることがあります。
セラミック矯正とは、ワイヤーやマウスピースといった矯正装置を使わず歯を削り、人工のセラミックブリッジを装着して歯並びを治す治療で、主に前歯で行われます。この治療の際、歯をたくさん削るだけでなく歯の傾きを変える際に歯の神経を取ることがあります。虫歯でもなく露髄もしていない健康な歯の神経を数本抜くかもしれないことを理解しておく必要があります。
ひどい虫歯や歯髄が露出して神経を取らなければならなくなった場合、抜髄という神経を抜く処置が行われ、その後は根管治療という根の中の治療を治療を行います。根の中に少しでも細菌が存在すると、再度虫歯や根の先が膿を持って歯ぐきにおできのようなでき物ができてしまうため、しっかりと根管治療を受けなければいけません。
そして抜髄した歯は歯を大きく削るため、根管治療後は削った歯の部分を補う治療を行い、その歯の治療を終えます。
その後気を付けなければいけないのは、神経を取った歯は脆くなる、ということです。これはなぜかというと、歯に酸素や栄養素を届けていた組織を取り除くため、歯に栄養がいかなくなるからです。
分かりやすい例で例えられるのが、木の枝です。根っこがしっかりとある木は土の中から養分と水分を取り込むため枝も葉っぱも元気でみずみずしいですが、もし抜いてしまうとどうなるでしょうか。
根っこから養分や水分が取れなくなった木は枝も葉っぱも枯れてしまいますよね。それと同じです。歯に栄養を届けてくれる歯髄がなくなってしまうと、歯は当然栄養がいかなくなり脆くなってしまうのです。どれだけ丈夫な被せ物を被せても、元の歯が脆くなることで歯の根っこが折れてしまうという危険性を背負ってしまうことになってしまいます。同じ衝撃を与えても、神経のある歯と神経を取った歯では強さが違うのです。
なお神経のある歯とない歯の寿命は、10年違ってくると報告されており、どれだけ歯の神経が大切なのかがお分かりいただけるのではないでしょうか。
いちど神経を抜いてしまうと、元に戻すことはできません。神経を抜いた歯をできるだけ長持ちさせることを基本スタンスとして維持していく必要があります。
そのためには、根管治療を途中で放棄せず最後まで行うこと、また毎日の丁寧な歯磨きや歯科医院での定期検診を受診し、口腔内の環境を清潔に整えることがとても重要になります。
また神経を取ったことで自分の歯の健康について向き合えることをプラスに生かすことができます。それまで定期検診に行ったことがなかった方でも、この治療をきっかけにお口の健康管理を行うことができれば治療した歯だけでなく、今ある歯を長持ちさせることに繋がるのではないかと思います。
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