公開日:2022年4月24日
矯正治療が始まると、気を付けたいのが口腔衛生管理です。矯正装置を付けて長期間日常を過ごすことは、装置を付けていない状態と比べるとどうしても虫歯や歯周病のリスクが高くなってしまいます。このリスクを少しでも抑えるためには、お口の中をきれいに保つ必要があり、とりわけ装置のお手入れが大切になります。今回は、口腔ケアと矯正装置のお手入れに焦点を当ててお話をいたします。矯正治療をお考えの方は、是非参考にしてください。
歯を動かすための矯正装置には2種類あり、それぞれ特徴が大きく異なります。ひとつはブラケットとワイヤーを用いて歯を動かす固定式の装置で、もうひとつは透明なマウスピースを取り換えながら歯を動かす着脱式の装置です。また主に小児矯正で使われる拡大装置と呼ばれる装置にも、取り外し式と固定式のものがあります。
インビザラインでよく知られているマウスピースや、お子さんの顎の骨を広げるために使われる装置は取り外し式で、装置の洗浄のしやすさが大きなポイントです。装置を取り外し、単体で洗ったり洗浄液につけることができるため、清掃管理は非常にしやすい装置と言えます。
いっぽう固定式の装置は、調整のとき以外は外さずに過ごします。当然、歯磨きも装置を付けたまま行わなければなりません。さらに細かな部品が使われているため、装置が付いている場所によっては歯や装置がきちんと磨き辛いというデメリットがあります。
特に歯の裏側に装置を付ける裏側矯正は人気はとても高いですが、表側矯正以上に口腔衛生管理と装置の清掃が大変です。クワドヘリックスなど固定式の拡大装置も同様で、お子さんの場合はなかなか装置まできちんと磨くのが難しいと思います。
このような特徴の違いを見ると、確かにマウスピース矯正のほうが装置の清掃がしやすいと言えるでしょう。
マウスピース矯正と比較すると、ワイヤー矯正は清掃が非常に面倒くさいというイメージを持たれるのではないかと思います。しかしワイヤー矯正は、マウスピース矯正では対応ができない症例やマウスピースの管理が苦手という方にとって適した治療法です。ここで装置別の清掃法についてご紹介しましょう。ワイヤー矯正の装置の清掃は少し大変ですが、慣れてくればコツが掴めてくると思います。
ワイヤー矯正は、歯の一本一本にブラケットを付け、そこにワイヤーを通して歯を動かします。またそれ以外にも細かな部品が使われていることも多く、歯磨きと装置の洗浄が難しいと言われています。ワイヤー矯正の歯磨きと装置の洗浄にあれば便利なものは以下のとおりです。
まず歯磨きは、普通の歯ブラシだけでは細かな部分の汚れがなかなか落とせません。全体的に磨いたあと、ワンタフトブラシという毛先の山が小さい特殊な歯ブラシを使って歯と歯ぐきの境目や、装置周りを磨きます。ワイヤーが通っている下の部分もワンタフトブラシなら磨きやすいでしょう。
歯の間の食べかすや汚れはフロスを使って落としますが、ワイヤーが通っているため上手く通らないと思います。歯磨きグッズ専門の通販などで矯正用のフロスが販売されていますので、使ってみると汚れが落としやすいかと思います。通せる部分は歯間ブラシを使うのもお勧めです。
装置の洗浄は、ワンタフトブラシが便利です。毛先が小さな山型になっており、装置の周りに就いた汚れを落とすのに適しています。奥歯の装置もワンタフトブラシならヘッドが小さいので入りやすく、ブラケットにも当てやすいでしょう。
取外し式の装置の場合、矯正を始める前と同じように歯磨きができます。しかし装置を付けることで虫歯リスクは発生しますので、矯正前よりも意識して歯磨きを行う必要があります。特に奥歯の溝に汚れが残ったままマウスピースを付けると唾液の流れがシャットアウトされるため長時間虫歯菌を閉じ込めてしまうことになります。そのため奥歯が虫歯になるリスクが高まりますので、より丁寧な歯磨きが必要です。また歯と歯の間の汚れもフロスや歯間ブラシを使って丁寧に取り除きましょう。
次に着脱式の装置の洗浄法ですが、食事の前に取り外した装置は流水できれいに洗い流しましょう。もし汚れがついてしまっている場合は、歯ブラシで磨いて汚れを取り除いてください。
そして1日1度は専用の洗浄剤を使って除菌、洗浄をします。インビザラインなどのマウスピース矯正は寝ている間も装置を付けておかなければいけないので、朝に洗浄をするのがお勧めです。朝食を食べている間などの時間を使って洗浄、除菌を行うと装置に付いている汚れや唾液、細菌などを取り除くことができます。拡大装置なども同じように洗浄して装置を清潔に保ちましょう。
絶対に行ってはいけないのが、熱湯での消毒です。熱湯はたしかに殺菌効果がありますが、装置の素材は熱に弱く、変形してしまう恐れがあるため熱湯消毒は絶対に行わないでください。
装置を付ける前は、当然のことですが歯をしっかりと磨きましょう。
固定式装置と着脱式装置の洗浄方法についてお話をいたしました。何も装置を付けていない状態でもきちんと歯磨きができるのは限界があると言われています。そこへ装置が付くと、より歯磨きがし辛くなり、お口の中の衛生環境も下がって虫歯や歯周病リスクが高くなってしまいます。
毎日の口腔ケアと装置の洗浄をしっかりと行うとともに、定期的に歯科医院でクリーニングを行うことが、スムーズに矯正治療を進める大きなポイントになります。矯正中のお口の中や装置のケアは大変ですが、きれいな口元を手に入れるためにも口腔ケアに力を入れるようにしましょう。
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