公開日:2022年5月18日
前歯の歯並びのトラブルをきれいに改善する方法は歯列矯正が最も一般的な方法です。
歯列矯正は歯を少しずつ動かすため、きれいになるまでに時間がかかりますが、短期間で前歯をきれいに改善する「セラミック矯正」を希望する方もいらっしゃるのではないかと思います。
このセラミック矯正は色々なリスクを抱える治療法であるため、そのリスクをしっかりと理解しておく必要があります。
今回は、セラミック矯正のリスクについてお話をいたします。
セラミック矯正とは、分りやすく説明すると「矯正装置を使わず、前歯に数本繋がったセラミックの被せ物を被せて見た目を治す治療」です。
歯列矯正はワイヤーやマウスピースを歯に装着して力を加え、歯を少しずつ動かしながら歯並びや噛み合わせを改善する方法です。
いっぽうのセラミック矯正は、歯列矯正に不可欠な矯正装置を使いません。
セラミックの被せ物を使うセラミック矯正には、次のような特徴があります。
セラミック矯正には以上のような特徴があります。言い換えれば、歯列矯正とまったく反対の特徴を持ち合わせているということになります。
では歯を動かさないセラミック矯正では、本当に歯並びを治すことができるのでしょうか。
例えば軽度の出っ歯や歯並びの乱れの場合、セラミック矯正で歯列を整えることは可能です。
歯を動かすわけではなく、複数の人工歯を繋げたセラミックのブリッジを付けて歯列を整え、見た目を改善させます。
セラミック矯正の流れとしては、①自分の歯を削る②必要であれば歯の神経を抜く③セラミックの被せ物を作るための型取りを行う④被せ物が出来上がったら装着する、となります。
セラミックの被せ物が出来上がるまでの間は仮歯を付けて過ごしますので、見た目の心配はありません。
セラミック矯正は歯並びを治すというよりは、口元の審美性を挙げる審美系の治療と考えたほうがよいでしょう。
歯列矯正を行う歯科医院や矯正専門医医院ではなく、美容系のクリニックでよく行われています。
「短期間で前歯の歯並びがきれいになって、費用も矯正より安いなら絶対セラミック矯正のほうがいい!」すぐにでも治療に取り掛かりたいと思われることと思います。
しかし、セラミック矯正には多くのデメリットがあり、その後の歯の寿命にも大きく関わってしまいます。
ではセラミック矯正のデメリットとリスクをご紹介します。
セラミック矯正では、セラミックの被せ物を被せるために、ご自身の健康な歯をたくさん削ります。
自分の歯を削ることは、歯の寿命に大きく関わります。
また歯の神経を抜くこともあり、歯の質を弱くしてしまいます。
自分の歯を削ること、神経を抜くことは歯の健康や寿命にとって最大の脅威となります。
歯列矯正でも抜歯をすることはありますが、セラミック矯正の場合でも歯を抜くことがあります。
ですが歯列矯正の場合、嚙む機能にそれほど重要でない小臼歯や親知らず、虫歯で残すのが難しい歯などを抜歯することがほとんどで、犬歯を抜歯することはあまりありません。
いっぽうのセラミック矯正では前歯だけを整えるため、小臼歯を抜いて歯を動かすことはありません。
場合によっては2番目の歯や犬歯を抜くことがあります。
特に犬歯は噛む機能において重要な役目を持っており、不必要に抜くことはまずありません。
このように、セラミック矯正では大切な役割を持つ歯を抜くことがあります。
出っ歯でも軽度の場合、セラミック矯正で改善させることは可能です。
しかし歯の出方が大きい場合、セラミック矯正をしても噛み合わせは改善されません。
歯を削り、高い被せ物を装着しただけで噛めない、という最悪の事態が起こる可能性があります。
セラミック矯正を行った直後は美しい口元であっても、何年か経つと歯周病のために歯ぐきが下がってきます。
その際歯ぐきと被せ物の間にすき間が生じ、見た目が悪くなってしまいます。
またそのすき間から細菌が入り込み、虫歯になってしまう可能性が高くなります。
最悪の場合、歯を削った前歯を抜歯しなければならない事態も考えられます。
こうやって将来的に削った前歯がどんどんなくなり、最終的には再度ブリッジや入れ歯になってしまうでしょう。
短期間で美しい歯列を手に入れられる、という謳い文句でセラミック矯正をしたい!と思われるのは当然だと思います。
しかしセラミック矯正は歯列矯正ではありません。
歯列矯正は歯並びの悪さや噛み合わせの悪さをきちんと改善し、嚙める機能を取り戻す治療であり、セラミック矯正はあくまでも審美性を考えた施術であって、歯列矯正とは言えません。
セラミック矯正は断固反対の先生もおられます。
矯正治療はガタガタの歯並びや噛み合わせの悪さを治し、見た目はもちろん、将来的な歯の健康維持を目的としています。
つまりセラミック矯正と歯列矯正では、本質的な部分から違うのです。
安易に歯を削る治療によるリスクがどういったものなのか、まずはしっかりと理解をしてから考えることをお勧めします。
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